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【ネタバレなし】ノルウェー映画『ロスバンド』(メッツァ北欧シネマ倶楽部 vol.4)



ノルウェー発!青春ロードムービー『ロスバンド』が、メッツァのGW期間中に湖畔のナイトシネマで上映されます。
この記事では、ノルウェーの地理や物価、そして監督のインタビュ―や登場人物にフォーカスしながら、ネタバレなしで解説してみたいと思います。
ノルウェーの雄大な自然を舞台に繰り広げられる同作品。森と湖に囲まれたロケーションのメッツァで鑑賞いただくと、さらに北欧の空気感を感じられるかもしれませんよ。


移動距離約1,500km!少年たちのロードトリップ

主人公のグリムと『ロスバンド・イモターレ』のバンドメンバーたちは、ノルウェー・ロックの決勝戦大会出場のために、彼らの住む町・ノルウェー南東部のヘドマルクから、北極圏最大の町・トロムソまで子どもたちだけのキャンピングカーで移動します。
距離としては、約1,500㎞。どのくらいのイメージかというと、東京から南へは東京―沖縄、北へは東京―宗谷岬くらいの横断。休憩なしで21時間なので、ちょっとした冒険です。

車でしか行けないわけではなく、ヘドマルクから首都のオスロまでは3時間弱、オスロ空港からトロムソは飛行機で2時間なのでぶっちゃけ半日くらいで行けます。
実際に、お父さんとお母さん、クラスメイトの女の子は、飛行機で会場に来ていました(笑)
みんなで最初から飛行機で行けば?なんて野暮なことはおっしゃるなかれ!
これは映画で、ロードトリップをしなければ、ドラマが生まれませんので…

そして、スウェーデンとは地続きの隣国。途中、とある事情で、スウェーデンに立ち寄るシーンもありますよ!


知っているとより理解ができる「ノルウェーの物価」について

ロック大会に行くにあたり、ギター担当のアクセルはドライバーのマッティンに5,000クローネでトロムソまで連れていってくれないか、という依頼をします。日本円だと、7万円ちょいくらいで、そこそこの金額ではありますが、マッティンは鼻で笑います。

2024年の日本が円安ということもありますが、ノルウェーは欧州でも物価が高いことで有名。手ごろなランチの相場は150クローネくらい。今はマクドナルドのハンバーガーセットが2,000円くらいしてしまいます(!)

また、道中、ガソリンスタンドに立ち寄るシーンもありましたが、ノルウェーは、世界第5位の石油輸出国であるにもかかわらず、ガソリン価格も、欧州で最も高い国とも言われています。
オスロ-トロムソの航空券は、安いもので1,300クローネから高いものは4,500クローネくらい。つまり、うまく安く行ければ4人行けるけど、時間帯によっては1人分にしかならない、しかも片道。

そんな割に合わない金額を提示されている、けれど、最終的にはその金額でドライバーを引き受ける理由は、マッティンと彼の家族との関係に影響しています。

また、優勝すると5,000クローネの賞金が出るカラオケ大会への参加費は250クローネ(約3,500円)でした。少し普通のランチくらいの価格の参加費を、安いととるか、高いととるか、みたいな感覚でしょうか。


ロー監督の音楽への情熱

本作品の監督・クリスティアン・ロー監督が来日され、『ロスバンド』アンコール上映のインタビューでのお話で印象的だったのは、音楽への想いやこだわりです。
音楽・バンドをテーマにした映画を手がけているのは、監督自身の体験がベースになっているから。小さい時から音楽が好きで、実際にロック大会にも出場したこともあるそうです。

監督も『ロスバンド』Tシャツで!

劇中に使用されている曲のこだわりに関しては、監督自身もロックが大好きで、「ノルウェーのロックバンドから選びたかった」とのこと。
来日していた奧さまもプロデューサーとして映画製作に関わり、選曲にあたりたくさんのアイデアをくれ、レコード会社への曲の使用許可も担当されたそうです。

キャストには、実際のミュージシャンも出演しました。
主人公グリムの憧れの伝説のドラマー「ハンマー」を演じるのは、ノルウェーで実際に有名なロックバンドTurbonegroのボーカルのハンク・フォン・ヘル(Hank Von Hell)。
落ちぶれた元ドラマーの役ということもあり、ダメ元でオファーしたところ、快く引き受けてくれて、撮影中の仕事ぶりも素晴らしかったとのことでした。

もし、登場人物たちが成長して、『ロスバンド』の続編ができたら?という質問には、ハンマーもきっと子どもたちに刺激をもらって、音楽に戻っていたかもしれないし、バンドはヨーロッパツアーに行っているかも、なんてコメントもありました。


9歳のチェロ少女ティルダに注目してみると…

通常バンドメンバーには、ベースがいるものですが、このバンドにはベースがおらず、自分の身体と同じくらいのチェロを弾きこなすティルダがいます。
これは脚本家のアイデアだったそうで、ベースがいないバンドで、意外性を持つ楽器として、チェロを採用したとか。

ティルダの部屋にあった大きな風景写真も、ストーリーの伏線となります。
その風景写真の場所は、北極圏にあるノルウェー領の群島スヴァールバル諸島のピラミデン(Pyramiden)

ここは、ノルウェー唯一のゴーストタウンと言われている場所。
北極の永久凍土に眠るゴーストタウンに「一人っきりになるために行きたい」と言っていたティルダ。

物語の最後に、実際にそこに行っている写真が登場します。
一人で行っているのか、誰かと行っているのか…ぜひエンドロールにご注目ください。

ピラミデン


文:川崎 亜利沙


クリスティアン・ロー監督の最新作『リトル・エッラ』の紹介記事はこちら
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