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【ネタバレなし】スウェーデン映画『リトル・エッラ』(メッツァ北欧シネマ倶楽部 vol.3)

主人公エッラがスウェーデンを舞台に繰り広げるいたずらな感動作品『リトルエッラ』が公開されました。
映画にも登場する大切なキーワード「BFF(Best Friends Forever)」をメッツァでも追体験できるコラボレーション企画、「BFFキャンペーン」が好評開催中!

映画がさらに楽しめるように、ネタバレなしでスウェーデンの文化を交えながら解説します。


主人公エッラが好きなサッカーと、スウェーデンの女の子のサッカー人気

映画のスウェーデン語の原題『LILL-ZLATAN OCH MORBROR RARING』は、「小さなズラタンと愛しのおじさん」という意味。ズラタンは、日本ではイブラヒモヴィッチとして知られているサッカー選手ズラタン・イブラヒモヴィッチです。
サッカー好きな方なら言わずもがなですが、欧州サッカーチームのエールディヴィジ、セリエA、ラ・リーガ、リーグ・アンと4か国でリーグ優勝を経験し、スウェーデン代表歴代最多得点記録保持。リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドに次いでキャリア通算500ゴールを達成し、「king of god」の愛称を持つ世代最高のストライカーです。
エッラのおじさん・スティーブに「小さなズラタン」つまり、「リトル・イブラヒモヴィッチ」と呼ばれるほど、サッカーが大好きなエッラ。劇中にもプレイシーンがたびたび登場します。

では、サッカーが好きな女の子、サッカーをプレイする女の子はスウェーデンでは「珍しい子」なのでしょうか?
答えは「NO」。サッカーをプレイすることは、スウェーデンでは女の子にも大人気。
実際にFIFAの女子サッカー世界ランキングでは、スウェーデンは、日本よりも上位です。
友人の日本人の女子サッカー選手も、スウェーデンのローカルチームに移籍し、プレイをしていました。実際に現地でプレイした肌感として、日本の女子サッカー界よりも、スウェーデン女子サッカーの方が断然盛り上がっていて、スウェーデンのスタジアムには、男子サッカーチームと同じくらい、女子サッカーチームの試合でも応援に人が入るそうです。
(いつか日本の女子サッカーの試合に、男子サッカーと同じくらいの応援の人がかけつけるくらいに、女子サッカーの市民権が上がったら、それはとても素敵なことですね)

ここでポイントになってくるのが、エッラは「人と仲良くするのが苦手」。でも、好きなのは他の女の子たちにも大人気な「サッカー」。そして、サッカーは「ひとりではできない」ことです。
この映画の最後にも、エッラはサッカーをしています。
どんなサッカーをしているのかが、エッラの成長譚のアンサーになっていると思いますので、その答えは、ぜひ実際にご鑑賞いただければと思います。


オリジナルキャラクターも!原作絵本との違い

この映画作品には、原作があります。スウェーデンのイラストレーター、作家、デザイナーでもあるピア・リンデンバウムによる絵本です。
実際に彼女にも、お気に入りのおじさんがいて、そういったことも原作に現れているそうです。

本作品の監督を務めたクリスティアン・ロー監督の初日の舞台挨拶のインタビューで、この映画を撮ることになったきっかけについて、前作『ロスバンド』でもプロデューサーをしたスウェーデン人のペッテル・リンプラード氏から連絡をもらい、原作を読んで、すぐこの話が大好きになったとのことでした。
ノルウェー人である監督にとっても、スウェーデンの児童文学は素晴らしいものなので、映画化することができて光栄だと語っていました。

クリスティアン・ロー監督にメッツァのBFFキャンペーンを持っていただきました!

原作のスウェーデン語の絵本は、日本でも一部劇場などで手に入るので眺めていたところ、絵本にはエッラの学校のともだち、お花屋さんの息子・オットーが出てこないことに気が付きました。
監督とお話させていただいたタイミングで、なぜオットーを登場させたの?と質問をしてみたら「作品にとって、それから、エッラにとっても、同級生の友だちがいることが必要だと思った」と話してくれました。

優しいオットーの存在、それからオットーの家の稼業であるお花屋さん、そしてオットーが愛するペットたちの存在は、映画には必要不可欠!ということですね。

それから、おじさんトミーの同僚・マイサンも新たに追加されていました。
マイサンは、男性ですがメイクをして、女装をしています。
映画にも、そして原作にも登場する、トミーの恋人、スティーブも男性です。
スウェーデンでは2009年に同性婚が法制化されていますので、映画でも、多様な嗜好をもった人たちが、当たり前のように登場しているのがスウェーデンらしいなと思いながら鑑賞しました。

また新たに追加されていたのは、カーチェイスのシーン。前作『ロスバンド』に続き、カーチェイスが入ると、盛り上がるのは定石なのでしょうか。

およそ30ページしかない絵本を、原作の良さやユーモアを壊さずに、81分の作品に広げた制作陣の愛を感じる映画です。


こどもと大人の距離感

それから、映画を観ていて、スウェーデン(北欧)らしいなぁと思ったのは、こどもと大人の距離感です。
私はフィンランドの小学校などの教育現場で働いていたときに思っていたのが、先生たちは生徒のことを、「こども」ではなく「ひとりの人間」として接していることがとても印象的でした。それは、障害を持つこどもに対しても同じで、下に見るとかではなく、本人たちの意思を尊重していて、とてもフラット(平等)でした。

劇中でも、エッラがいたずらをしたり、生意気なことを言うのですが、スティーブは怒ってひっぱたいたり、ブチ切れたりすることなく、それにちゃんと付き合ってくれて、根気強く接しています。なんなら、ふざけるときは、一緒にノッてくれたりもします。
また、エッラが蹴ったサッカーボールを、知らないおじさんの頭にぶつけてしまったときも、おじさんは痛そうでしたが、怒らずに「いいシュートだ」と言って去っていきました(笑)

エッラがひとりでバスに乗っていて、となりの知らないお兄さんをつついて話しかけても、お兄さんは一応話を聞いてくれます。(最近の日本なら、知らない人と話しちゃだめ!となってしまうこともありそうです)
スウェーデンやフィンランドのバスなどの公共機関は、ベビーカーを引いている大人1人は無料で乗ることができるのですが、ベビーカーを車内に乗り入れる際に、周りの知らないたちが手を貸してくれて、手伝ってくれます。
バスでエッラが平気で隣の人に話しかけられるのも、社会全体がこどもを受け入れる素養がある様子が当たり前に描かれているなと感じた瞬間でした。


スウェーデン好きなら反応してしまうストックホルムのロケ地の数々や音楽

①ライオン石像
映画開始から数分後に、あ、この映画はロケ地がストックホルムだ!と認識したのは、ライオンの石像です。スウェーデンの国章でもあるライオンをモチーフにしたこのライオンは歩行者天国などに車両が入ってこないための車止め。ストックホルムの街中には、あちこちにこのライオンがいるんですよ。映画では雄ライオン像ですが、雌ライオン像もいます。

②グローナルンド遊園地

モンスターイベントが開催された遊園地は、「グローナルンド」。水の首都と呼ばれるストックホルムでは、船でも陸路からも行けます。エッラたちも、船で向かっていましたね!


③エリートホテル マリーナタワー

トミーのファッションショーが開催されたのは、「エリートホテル マリーナタワー」。
エリートホテルというスウェーデンのホテルチェーンの1つです。

スパも併設されていますので、ストックホルムに訪れた際に、聖地巡礼で泊まってみるのはいかがでしょうか。

④音楽
また、劇中に何度も耳にする「The Wannadies」の「You & Me Song」にスウェディッシュポップ好きなら懐かしさを覚えること間違いなしです!

The Wannadies は、The Cardigans 、Maja、cloudberry jamに続き、1990年代半ばのスウェディッシュポップ・ブームを牽引したバンドのひとつです。

映画には、モンスターパンケーキやポークパンケーキなど、スウェーデンの食べものも登場します。

絵本の原作にも登場したポークパンケーキはメッツァの「BFFキャンペーン」でも映画コラボとして期間限定で食べることができますよ。
お寿司を好むスタイリッシュなトミーには不評だったスウェーデンの定番家庭料理、ジャムを添えて食べるポークパンケーキ、どんな味か気になった方はぜひお試しください。

ほかにも、スウェーデンの関連メニューや展示、フォトスポットも!

フォトスポットには、オットーの大切なお友だち・エエヴァとシャシュティン達もさりげなくいますので、どこにいたかわかった方は教えてくださいね。

文:川崎 亜利沙


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