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「ムーミンバレーパークのAto Z」【E】Exhibition 企画展「トーベ・ヤンソンとムーミン」

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」。

今回の【E】は、Exhibition(=展示)
展示といえば、展示施設Kokemusがありますが、その中の一角、
期間限定の「今」しか見られない企画展「トーベ・ヤンソンとムーミン」の鑑賞のポイントを
いくつかご紹介したいと思います。

こちらの企画展内で展示されているフィンランドから来日している貴重な作品群の返却は今年の予定でしたが、コロナ禍の影響でパークがクローズしていた時期もあることから、フィンランドの各貸出先に相談。多くの方に見てもらいたいという思いを伝え、税関とも調整。
先日無事に貸出延長許可が降り、もうしばらくの間楽しんでいただけることになりました!

展示について

オープニング記念となるこの企画展では、「ムーミン」の生みの親、トーベ・ヤンソン(1914-2001)の生い立ちや芸術家への道のり、ムーミンの原型といわれている鼻の長い生き物「SNORK」からムーミントロールになるまでの変遷を通し、トーベが多彩なアーティストであったことを紹介するほか、ムーミンバレーパークのはじまりと合わせて、「はじめて〇〇になったムーミン」として初期の貴重なムーミンコレクションを約70点、お菓子、人形、テキスタイル、お芝居、書籍などさまざまな角度から展示し、トーベとムーミンのことを知っていただけるような展示構成としています。

また、コケムスの3階から2階にかけても再現されている、トーベがヘルシンキ市から依頼され制作したアウロラ子ども病院の壁画のために1956年に描いた習作2点も、それぞれ1点ずつ、フィンランドから来日し、油彩やテンペラで繊細に塗り分けられたトーベの筆遣いを身近でご覧いただくことができます。現在は2点目のテンペラ画が来日中です。

展示全体の特徴としては、トーベとムーミンの入門編として、わかりやすく、誰にでも見て楽しめるよう、貴重な作品を散りばめつつも、コンパクトで簡潔にまとめることを意識して作りました。


母娘のさまざまな関わり

展示冒頭では、トーベを形作った「家族」について紹介していますが、特に影響を受けたのは、グラフィックアーティストだった母のシグネです。
幼少のトーベが、母シグネのひざの上で絵を描いている写真を展示内でも紹介しています。

1920‐50年代にフィンランドで発行された風刺雑誌「ガルム」は、シグネがもともと挿絵の仕事をしていたことをきっかけに、若きトーベも挿絵画家として登場することになります。
ガラスケースには、1943年にはシグネ、1949年にはトーベが表紙を描いた当時のガルムが展示されており、母娘のそれぞれの絵の特徴を見ていただくことができます。

フィギュア展示のコーナーでは、シグネが1950年代に原型を手がけた
ARABIA社のフィギュアも展示しています。
同じケース内の横には、トーベのパートナーだった、トゥーリッキ・ピエティラが1990年代に原型を手がけたフィギュアも並べました。
トーベの手によって生み出されたムーミンを形にする―命を吹き込む作業―は、トーベがその人の才能をよくわかっていて、かつ、信頼できる存在である母やパートナーと制作したかったのではないかなとも思えてきます。(その隣のケース内にある1950年代につくられた「幻のムーミン人形」と呼ばれるアトリエ・ファウニのフィギュアは、のちにトーベも公認することになりますが、最初はトーベが知らないうちに無許可で作られていたのでなおさら…)

キーワードは、「はじめて」―約70年前からの、「はじめて〇〇シリーズ」

はじめてのムーミンバレーパークの展示、ということから、1950 年代から様々な分野で「はじめて〇〇になった」-商品化された―ムーミンたちを紹介しています。

さきほどのフィギュアや、西ドイツで作られたパペット映像、トーベ自身がデザインを手がけたファブリックやデパートの包装紙、演劇やオペラのプログラム、舞台の衣裳スケッチの見事なレイアウトにもご注目いただきたいです。

また、1960年代に日本ではじめてムーミンが翻訳された書籍も展示していますが、当時は、日本人の画家が挿絵を描いており、トーベのムーミンとはまた違った味わいを感じていただけると思います。

そして、「初代ぬいぐるみ」と言われている、1960年代のぬいぐるみも展示しています。こちらは偶然、フィンランドのセカンドハンドショップで見つけたものです。
今の挿絵に忠実なフォルムで作られているぬいぐるみとは程遠いですが、
どこか間の抜けた手作り感のあるフォルムと表情をぜひご覧ください。


対になるアトリエでの写真

その他にも、トーベの初期の絵画作品を通して、画家としてのトーベの活動や、ムーミンのはじまりとして、トーベの中でムーミンがだんだんと形作られていったことを感じられる映像とグラフィックなども展示しています。

企画展の冒頭と後半では、アトリエでのトーベの写真を大きく展示しています。


若い頃、ひたむきに画家を目指して、構図まで指定して撮影したという写真と、晩年にムーミンに囲まれながら穏やかな表情を浮かべるトーベ。
同じアトリエでの場所を通して、トーベの創作活動の経過や変化を見ていただけるよう、若き日のトーベと、晩年のトーベを対にしました。


習作の油絵とテンペラ画

トーベの絵画・アウロラ子ども病院の壁画のための習作のことや、
ヘルシンキ・アート・ミュージアムとのエピソードはこちらのメッツァ公式noteでも、以前ご紹介しています。

アートと自然、与えられた才能-HAMヘルシンキアートミュージアムとのエピソード

コケムスにお日さまはいくつある?

最後に。
こちらの展示エリアは、展示品の所有者の意向や著作権保護・作品保護の観点から撮影をご遠慮いただいていますが、どうか残念に思わず、ここでスナフキンの言葉を借りてみたいと思います。
「そうだな。
なんでも自分のものにして、もってかえろうとすると、むずかしいものなんだよ。ぼくは、見るだけにしてるんだ。
そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんをもち歩くよりも、ずっと楽しいね。」
『ムーミン谷の彗星』

この展示のことも、みなさんの頭にそっとしまってもらえるものになることを願って。

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Kokemusオープニング記念企画展 

トーベ・ヤンソンとムーミン展

会期:2019年3月16日‐2021年6月末
協力:Moomin Characters Oy、Helsinki Art Museum
日本語監修:冨原眞弓、英語監修:安達まみ
後援:フィンランド大使館

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ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください

株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)

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