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地元飯能の木材と北欧デザインの融合ー”西川材”を活用し、”人が集う場所”づくりー(メッツァの夏至祭2024①)

北欧の夏至や夏の風物詩を体験できる「メッツァの夏至祭2024」では、
毎週末、北欧各国ゆかりのゲストが来日し、夏至祭を盛り上げてくれました。
これから、来日ゲストへの貴重なインタビューや、エピソードなど何回かに渡ってご紹介していきます。




夏至祭の装飾は、飯能の木材と北欧デザインの融合


日本フィンランドデザイン協会とのプログラムの一環として、「夏至祭の展示装飾プロジェクト」を実施しました。
フィンランドから建築家のヤーッコ・トルヴィネン氏を招聘し、工学院大学 鈴木敏彦研究室(建築学部 建築デザイン学科)と共同で飯能の優良木材・「西川材(※)」を活用した作品を制作・展示するものです。

この取り組みは、日本と北欧5か国間において相互理解や友好関係に役立つプロジェクトへ助成をおこなっているスカンジナビア・ニッポン ササカワ財団による助成を受けて実施されました。

日本フィンランドデザイン協会への助成が決定し、同協会の理事で北欧建築やデザインに造詣の深い鈴木教授が受け持つ工学院大学のゼミで協力して取り組むことになりました。プロジェクトに参加したのは、北欧建築に特化して学んでいる大学院生と4年生の14名です。

西川材※
埼玉県産の優良木材として、首都圏を中心に使用されている木材のこと。江戸の大火の復興用材として、飯能を含む埼玉県の南西部から木材を筏にして江戸へ流送していたため、「江戸の西の方の川からくる材」という意味から「西川材」と呼ばれるようになったそうです。

今回の作品は、ヤーッコ氏が設計したヘルシンキの「リトル・フィンランディア」の原木の柱をモチーフに考案された、北斗七星の形をしたバーカウンター、スツール、キャンドルホルダーです。

ヤーッコ氏が設計したヘルシンキの「リトル・フィンランディア」
夏至祭装飾のバーカウンター
夏至祭装飾のスツール
夏至祭装飾のキャンドルホルダー

この装飾は、メインの広場「ノルディックスクエア」に設置され、日本、フィンランドなど北欧各国の国旗が掲げられました。
なんとこの国旗は、手芸が得意な学生が端切れを組み合わせて手作りしたそうです。木製の素材に合わせた温かみのある国旗で、同じ色合いの布でも近くで見ると柄が異なっていて、オリジナルの一枚に仕上がりました。


“週末の「かがり火」に、人が集う場所をつくる”

作品のテーマを“週末の「かがり火」に、人が集う場所をつくる”とし、ヤーッコ氏の「リトル・フィンランディア」にインスパイアされ、皮を剥いた原木を使った作品にしようと考えたと鈴木教授は語ります。

ヘルシンキの「リトル・フィンランディア」

夏至について調べていると、季節を示す北斗七星は“夏至の日に南を指す”という文章を見つけ、北斗七星のひしゃくの形をしたテーブルを作ることに決めたそうです。

大学のゼミサイドは、オンラインでヤーッコ氏と打ち合わせを重ねる傍ら、メッツァでは、飯能市内の材木関係業者の協力を仰ぎ、フィンランド・タンペレからの木材関係の企業団の視察と合わせて、実際の山へ足を運び、伐採の様子や貯木場、加工する様子の見学、西川材の云われや現代の木材の需要などについても学ぶ機会を学生さんたちにアレンジを担当し、今回の制作協力会社である飯能市内の事業所・フォレスト西川さんをご紹介しました。
学生たちは、普段見る機会のない原木にインパクトを受けたそうです。

林業伐採現場視察 協力:株式会社森田建設緑化様
 貯木場視察 協力:大河原木材株式会社様
製材所見学及び企業紹介 協力:株式会社フォレスト西川様


北斗七星とフィンランドのつながり

 北斗七星は季節を示す星座ですが、北欧ではどのような伝承があるのでしょうか。
ヤーッコ氏によると「私はフィンランドの最北の地域にあるラップランドの出身で、夏は白夜で星が見えないため、そういう伝承はない」とのこと。
ですが、オンラインでの打ち合わせで夏至と北斗七星の関連を聞き、「北斗七星はオオクマ座の一部で、クマというのはフィンランドで象徴的な動物。また、農場の柵もイメージしているとのことで、北欧的な作品だと感じた」と振り返ります。 

作品について「丸太のベンチは、ただ丸太を切ってスツールにしたのではなく、細い丸太を横に複数つなげてひとつのスツールを作っていて、現代的なアイディアですごく良いですね。伝統的なものを現代的に変えるというアイディアはすごく良い。原木の良さを生かした作品になりました」と関心していました。

そして、「このプロジェクトに参加できたことをとても誇らしく思っています。鈴木教授や学生たちと関われて、日本との架け橋になれたら嬉しいです」。と語ります。

ヤーッコ氏と鈴木教授

 鈴木教授は「デザインしても、それを実現するというのは大変な作業です。それを今回、フォレスト西川さんというプロの手も借り、レベルの高い作品を完成させることができました。学生たちは今回のプロジェクトを通して、チームとして結束力が高まったと感じています」と述べ、「フィンランドと日本は自然に対して近しい価値観を持っていて、木の本来の色に美学を感じるというところが共通の想いだと思っています。僕ら建築の仕事は居場所を作ること。ここメッツァの自然の中で集ってもらう場所になれば」と話していました。

オブジェ設置後から撤去までの数週間は、バーカウンターとしてはもちろん、ライブの客席、CDの販売カウンターとしてなど、‟人が集う”ざまな用途で使用されている様子が印象的でした。

バーカウンター越しにライブを眺める様子
エストニアのシンガー、マリ・カルクン氏との交流場所として


設置も、学生さん、ヤーッコ氏自ら行いました!

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フィンランドの建築家指導による夏至祭の展示装飾プロジェクト(スカンジナビア・ニッポン ササカワ財団助成2024)
■主催:日本フィンランドデザイン協会、メッツァビレッジ
■協力:工学院大学鈴木敏彦研究室、株式会社フォレスト西川

プレスリリースはこちら
メッツァの夏至祭についてはこちら

「メッツァの夏至祭 2024」
■日時:2024年5月25日(土)~6月23日(日)入場無料
■詳細:https://metsa-hanno.com/lp/midsummer2024/
■共催:飯能市フィンランド協会
■後援:アイスランド大使館、エストニア大使館、エストニア政府観光局、スウェーデン大使館、デンマーク王国大使館、ノルウェー大使館、フィンランド大使館、ラトビア大使館、ラトビア投資開発庁、リトアニア大使館、リトアニア政府観光局、飯能市国際交流協会
■協力:飯能市立図書館、株式会社ハーモニーフィールズ、株式会社KADOKAWA

文・写真 大崎みなみ、川﨑亜利沙

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