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「北欧にラーメン!?」の意外性と必然性

らーめんAFURI in ヴァイキングホール

メッツァビレッジの住人・第4回は、「らーめん AFURI」のストーリーです。北欧をテーマにした商業施設「メッツァビレッジ」に出店を決めたのには、一体どんな想いがあったのでしょうか。北欧との関わりやAFURIの哲学、さらに人々を魅了し続ける味の決め手について、お二人のキーパーソンに聞きました。

“なんか心地がいい”を重視する感覚

このインタビューが行われた場所は、「らーめん AFURI」の社長・中村比呂人さんのご自宅。「徹底的に好きな感じのインテリアにしたかった」という空間は、ポール・ケアホルム(※1)やトレカンテン(※2)などの美しい北欧家具で統一されていました。

「北欧のもので揃えようと思ったわけではなく、僕はこういった“温かいのにキリッとしている”感じ、言うなれば“緊張と緩和のバランス”がとても好きなんです。どこか知的でシュッとしていて、温かみを感じられる。そういうものを求めたら自然と北欧家具になった、という流れです」(中村さん)

中村さんの好みは、実は店舗のバックヤードにもこっそり導入されています。

「AFURIのバックヤード(休憩室)に、ヤコブセンのセブンチェア(※3)があるんです。こういう些細なことで“なんかいい感じ”ってスタッフが思ってくれたら嬉しいし、そういう気分でバックヤードから表舞台に出ていってくれたらいいなあと。これは狭いラーメン屋だからこそできるのかもしれないですね。全部にはお金をかけられないけど、何か1ついいものを置くくらいのことはできるから」(中村さん)

中村さんのお話を聞いていると、“感覚”をとても大切にしているのが伝わってきます。

「僕は北欧のことはそれほど詳しくないんですが、訪れた時に“なんかいいなあ”って思ったんです。(ノルウェーの)オスロは、都心の近くなのに自然が美しく空気が澄んでいて、ゴミゴミしていないのが良かった。(フィンランドの)ヘルシンキは、港の切なげな感じが好きでした。街にあるオブジェのデザイン1つ1つとっても、やっぱり“なんかいいなあ”って思うんですよね」(中村さん)

「メッツァビレッジ」に出店を決めた理由も、その感覚が働いたそうです。

「出店依頼のお話をいただいた時は、一瞬どうしようか迷ったんです。でも、いつも出店を決める時はだいたいテンションが上がるんですよね。もちろん商売として末永く続けられるかどうかを見極めた上での判断ですが、“世界のムーミンならいけるでしょ”って確信もあった(笑)。
ムーミンの世界観って独特ですよね。ただのアニメじゃなく、奥行き、肌触り、やわらかさ、湿気、そしてあの情緒が心の琴線に触れるんです。宮沢湖を囲む『メッツァビレッジ』の雰囲気も、とても良かった。だから、そんなテンションの元で仕事をしているチームが作る場所なら、間違いないんじゃないかって思ったんです」(中村さん)

「AFURIには崩しのテクニックがあるんです」

さて、AFURIの「らーめん」(※4)をまだ体験したことがない方のために、どんなメニューがあるのか解説しておきましょう。社長の中村さんが厚い信頼を寄せるのが、ゼネラルマネージャーの平田展崇さん(写真左)。AFURIの「らーめん」は全て厚木のセントラルキッチンで精魂込めて作られ、毎日2回、冷蔵便で各店舗に届けられます。それを統括しているのが平田さんです。

「AFURIの代表作はやっぱり『柚子塩らーめん』(1080円)です。黄金色のスープの素材は鶏が主体で、昆布、かつおぶし、煮干しなどの魚介と、ネギなどの香味野菜を入れて、阿夫利山の天然水で仕込んでいます。和であることに重きを置いているAFURIにとって、柚子はまさに“アイデンティティ”。チキンのブロスではあるけど、実はだしをひくという意識のもとにスープを作っているんです。和食のおだしやお吸い物と同じ考え方をしています。」(平田さん)

ただし、ここで上品にまとまりすぎないのがAFURI流。

「肉自体の旨味を味わっていただきたいチャーシューは、低温でじっくりボイルしたものを、ご注文いただいてからタレをくぐらせて炙っているんです。こんなに個性の強いチャーシューを乗せたらせっかくの黄金スープが台無しじゃないか、って思われがちなんですけど、ここは崩しのテクニック。いい意味で期待を裏切るために、想像を超えたことをするのがAFURIなんです」(平田さん)

他にも驚きが隠されたメニューは数々。「辛露つけ麺」(1380円)や「炙りコロチャーシュー飯」(680円)も根強い人気で、中にはこれしか頼まないお客さんもいるとか。やみつきになる理由は、きっと体験してみたらわかることでしょう。

北欧になぜラーメン? 一線を画したAFURIの世界観

ここで再び社長・中村さんのお話に戻ります。「メッツァビレッジ」への出店依頼があったとき、最初はご自身も「北欧にラーメン?」と思ったそうです。

「でもお声がけくださった方が、『メッツァビレッジは日本だし、AFURIはただのラーメンとは違う。味も内装もイメージに合うと思う』っておっしゃってくださったんです。うれしかったですね。
実はこれまで海外に出店してきたポートランド(アメリカ)もリスボン(ポルトガル)も、最初は求められて出ていったんですが、最終的にはその土地で出店する意外性と必然性を両方感じたんです。今回も同じですね。『メッツァビレッジ』のお店は、現状考えられる最高レベルの、動きやすくて美しい店舗になる予定です」(中村さん)

そして中村さんは、こうも加えます。

「内装にもこだわっているけど、やっぱり最後は味が全て。一番大切なのは、目をつむっていてもすごく美味しいと感じられて、また食べたいと思うかどうか。脳みそにズキュンと感じられるか。恋に落ちちゃうかどうかだから」(中村さん)

実は先の平田さんも、こんなことを言っていました。
「お客様に気づかれない程度に日々微調整しながら、日々味を磨き上げている」と。
多くの舌を魅了する味と居心地の良さを生み出しているのは、気づかない程度の絶妙なチューニング、まさにプロのテクニックだったのです。

「メッツァビレッジ」の中ではどんな存在感と世界観を生み出してくれるのでしょうか。きっと私たちの想像を飛び越えるような気がしてなりません。

※1 デンマークの家具デザイナー・ブランド
※2 デンマークの家具ブランド
※3 デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンの代表作の1つ
※4 和を重んずる「らーめん AFURI」では、ラーメンではなく「らーめん」と表記

取材・文/河辺さや香
写真/宮本よしひさ





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