「私たちの手で、絶滅危惧種・トウキョウサンショウウオを守る」フィールドワーク【メッツァにすむ希少な生きもののくらしを守ろう!ー卵の観察会編ー】レポートvol.2
【フィールドワーク】メッツァのすむ希少な生きもののくらしを守ろう!のイベント報告第2段です。
2024年3月23日に「卵の観察会」が行われました。
曇り空でひんやりと寒い中でしたが、両生類や昆虫、植物などに興味・関心のある7組15名の参加がありました。
■観察会に参加の仲間とご対面、期待感を高める
最初に講師の森のフィールド学舎さん(以下モリマナさん)から「今日は湖の対岸に見える森の中に入ります。午前中はそちらでフィールドワークをし、午後は実際にトウキョウサンショウウオの卵の観察や数を数えたりして調査活動を行います。」とスケジュールの説明が行われました。「もしかしたらトウキョウサンショウウオの成体を見ることが出来るかもしれません。」となんとも楽しみな一言も。
フィールドワークに出発する前にまず一度、調査場所にトウキョウサンショウウオの卵があるのか確認をしたところ、「あ!あった!」「こっちにもある!」と皆さん目を輝かせていました。
午後の調査活動への期待感が一気に高まりました。
イベントを楽しく過ごすため、ここでモリマナさんお決まりのダジャレを交えた掛け声をかけました。
「寒い中、まだ皆さんの気持ちも上がりきれていないかと思いますが…トウキョウサンショウウオのくらすメッツァビレッジで、曇り空を吹き飛ばせるよう、“メッツァ”楽しみましょう!」「おー!!!」と笑顔で気合を入れました。
■まずは、”春”を探しに行こう
フィールドワークの現場となる森へ出発です。
向かう道中は、“春”を見つけながら歩きました。
するとさっそくモリマナさんから「見てください。」と声がかかりました。
地面に落ちていた枝を手にしたモリマナさんは、「ナイフでスパッと切ったように見えますよね、これ実はムササビが芽をつついて食べた後なのです。」と紹介。
単純に地面に落ちているだけかと思いきや、実は動物たちの痕跡だったという発見も楽しめるのが、自然あふれるメッツァのフィールドの魅力です。
スギボックリ、キュウリグサ、ハルジオン、セイヨウタンポポ、オンブバッタ、ヤママユ、ヘビイチゴ、ヨモギ・・・次から次へと“春”が見つかります。
モリマナさんたちは植物に関する知識も豊富で、ちぎって嗅ぐと青臭いにおいのするキュウリグサは、よく洗ってサラダにして食べると美味しく、ハルジオンも素朴な味とのことで、食べることのできる植物がたくさん足元に生えていることに驚きました。
また、クスノキの葉は、防虫剤や防腐剤としておなじみの「樟脳(ショウノウ)」のにおいがするので、虫たちには食べませんが、アオスジアゲハだけは食べるのだとか。他の虫たちが食べないため、アオスジアゲハはその分たくさん食べられる。食べにくい葉っぱには、それだけを食べる専門家の生きものもいると教えてくれました。
背の低いタンポポも見つけました。
「夏に咲いているのはもっと背が高いですよね。まだ短いのはまだ周りに植物が生えていないから高くする必要がない。つまり、今がんばって栄養を使う必要がない。この背の高さのタンポポは春限定ですよ」(モリマナさん)。
じっくり時間をかけて、対岸へ着きました。
そこではキツネの巣穴を発見したほか、“青い宝石”と呼ばれるジャノヒゲの実もなっていました。
毛むくじゃらでかわいらしい見た目が特徴のアブ・ビロウドツリアブも捕まえてみんなで観察。ホバリングが得意で、ホバリングをしながら蜜を吸うそうです。飛んでいるときはまるで綿毛が飛んでいるかのようだそうです。
観察を終えお昼休憩をはさみ、午後は、普段公開されていないバックヤードに入り水辺で卵の状況の調査を行います。
■いよいよ卵の調査開始
モリマナさんは、「たまごは2つで1セットです。それが1匹のメスが産んだたまごです。ぜひペアで探してください。」と呼びかけ、参加者の皆さんは優しく手や網ですくい、1対ごとにまとめてバットへ並べていきました。
1対ごとに並べるのは、どのくらいのメスがここに産みにきているのかわかるように、そうするのだそうです。
卵を触った参加者たちはみな、「プルンプルンだ!」「中に黒いつぶつぶが入っている。」と興味津々です。
トウキョウサンショウウオの卵は、5~8センチ程のクロワッサンのような形の透明な卵嚢が特徴です。
その卵嚢の中に黒い丸(幼生)が何個あるのかをみんなで手分けして数えました。
モリマナさんによると、小さい卵嚢は小さい個体、つまり若い個体が産んでいて、大きい個体は成熟した個体が産んでいるということが分かるのだそうです。
また、卵嚢の中の卵の数も大人になってすぐの個体は少なく、成熟しピークを迎えた個体のものは数が多く、今回は卵嚢の中の卵の数が50~60個だったので、成熟した個体が多い可能性があるとのことです。
卵は36対あったので、36匹のメスが卵を産んだことになります。
モリマナさんの「カエルは前足後ろ足どっちから生える?」の問いに、参加者は「後ろから!」と回答。「サンショウウオは前足から生えるんですよ。今日はその状況は見ることはできないけれど、そんな不思議で面白いことも今後観察していきたいですね」と話していました。
■トウキョウサンショウウオの成体が!
すると、「あ!トウキョウサンショウウオがいた!」。成体を発見しました。
網ですくい、こちらもじっくり観察しました。
「ぬるぬるする!」「ぷにぷにだ!」「オスかな、メスかな」と大興奮です。
その後も見つかり、なんとオス5匹と出会うことができました。
どの個体も両手に収まるほどのサイズで、とても愛らしい姿をしていました。
オスばかりが見つかった理由としては、「メスを待っているから」とのことです。
これでこの日の調査は終了です。
モリマナさんは「サンショウウオは水辺の周りにしか棲むことしかできません。環境に影響され、簡単にいなくなってしまういきものですが、保全活動を行うことで守っていける。人間の少しの手助けで絶滅せず命をつないでいけるということを覚えておいてもらえたら。」と呼びかけました。
絶滅危惧種の生態を学ぶフィールドワークイベントの第2弾となる今回のイベント。世界的な取り組みとして注目を集めているSDGsの中でも重要性が高い目標である「環境保全」、そして地球環境を考慮したオリジナルブランド「Ethical Choice(エシカルチョイス)」の第9弾として実施いたしました。
前回もお伝えしましたが、トウキョウサンショウウオの寿命は長く、平均で10年~15年といわれているので、今後の保全活動も長いスパンで考え、行っていくことが重要です。今後もその過程をお伝えしていく予定です。
【メッツァからの挑戦】森のトレジャーハント〜春夏編〜
森と湖のロケーションで、いろいろな生きものたちと出会うことができるメッツァですが、豊かな自然の中にはチョウやバッタ、ハルジオン、モミジイチゴなどの、たくさんのお宝が隠れています。
そんなとびきりの宝物を集めるためのトレジャーハントに挑戦し、あわせて、虫好きのお子さまに大人気の昆虫観察などイベント盛りだくさんの一日をご用意しました。
この時期ならでは自然環境で、生き物にも親しみながら、楽しく学ぶ初夏の思い出をつくるイベント】森のトレジャーハント〜春夏編〜を2024年5月18日に開催します。
一緒に自然の中にあるお宝を見つけませんか?
文と写真 大崎みなみ
写真 野村洋之