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「ムーミンバレーパークのAto Z」【C】Chair(椅子)

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」

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この夏、展示施設Kokemus(コケムス)のジオラマ前に、名作椅子「Nychair X Shikiri」が新しく仲間入りしました!


ということで、今回の【C】は Chair(椅子)です。

まず、ムーミンの物語が誕生したフィンランド含む北欧の文化背景を簡単にお伝えできればと思うのですが、冬眠するムーミン一族と違って、北欧の人々は冬の時期が寒くて暗いため多くの時間を屋内で過ごすこと、また、家族や友人との時間を大切にするライフスタイルがあり、北欧の人々はそのライフスタイルを豊かにするための、家具や食器・日用品のデザインにもこだわる傾向があります。

これはムーミンの家や調度品にも言えますが、北欧の家は家具や建具に天然木を多用すること、居心地を重視した温かみのある配色など、古くは自然と共生してきた時代もある私たち日本人にとってもほっとするものが多く、今や「北欧家具」は1つのカテゴリとして、高い技術と普遍的な優れたデザインとして日本でも人気なのは言うまでもありません。

メッツァビレッジやムーミンバレーパーク内で共通しているのは、
ゲストが心地よく過ごせる場所であってほしい、ということ。

疲れたときでも座り心地次第で快適に感じることができる椅子などはいちばんゲストに近いインターフェースなので、できるだけ心地良く滞在していただけるよう、実は、パーク内展示施設コケムスのいくつかの場所では、北欧にゆかりのある椅子を設置していますので、これから【C】Chairをピックアップしてご紹介したいと思います。

―Kokemusで愉しむ北欧ゆかりの名作椅子たち―


Nychair X Shikiri @Kokemus3Fジオラマ前

Nychair X Shikiri @Kokemus3Fジオラマ前

今年2020年に、発売開始から50周年を迎える「Nychair X(ニーチェア エックス)」は日本人デザイナー新居猛氏が北欧のデンマーク家具の美しさに魅了され、研究に研究を重ねてデザインした名作の折りたたみ椅子。Nychairという名前の由来は、デザイナー‘新居 猛’(にい たけし)の名字とデンマーク語の”新しい”という意味の『NY(ニュイ)』をかけています。

コケムスのジオラマ前で座り心地を体験いただけるのは、デンマークにルーツを持ち、多くのムーミンのデザインも手がけてきたテキスタイル&インテリアデザイナーの河東梨香氏が「Nychair X Shikiri」として新たに室内と戸外の間に緩やかな繋がりをもたせる道具としてリデザインしたシリーズで、日本と北欧のデザインが融合した椅子は、日本に誕生した北欧生まれのムーミンのパークや、パークを通して屋内外の隔たりなくムーミンの世界を楽しんでいただけるコンセプトにもマッチします。
デンマークにある14歳~18歳までの学生が、自分の好みや興味に合わせて通うことのできる全寮制の教育機関のエフタースコーレ(Højer Efterskole)でも
デンマークと縁のあるデザイナーが開発に携わっているということで「Nychair X Shikiri」が日本のデザインを学ぶ授業の教材としてもこれから使われる椅子でもあります。

この椅子に座り、背もたれに身体を傾けながら、ゆったりとした気分で、彗星や白夜などに移り変わるジオラマの様子をみていただけると思います。


STOOL 60 @Kokemus2F Kauppa&Kahvila内カフェ

世界的に有名なフィンランド人建築家アルヴァ・アアルトが1933年にデザインした「STOOL 60(スツール 60)」。アアルトが創設した会社Artek(アルテックは「アート(芸術)」と「テクノロジー(技術)」を合わせた造語)を象徴するデザインのひとつであり、スツールとして、サイドテーブルとして、ディスプレイ台として汎用性があり、あらゆる使い方ができます。アアルトが開発をした、フィンランドバーチ(白樺)材を直角に曲げる技術を応用したシリーズのひとつです。あらゆる環境に馴染むシンプルで普遍的な
デザインは、今もなお、世界中で愛され続けています。

これは、フィンランドでは本当によく出会う椅子で、学校などの公共施設からカフェ、住宅内まであらゆるところで目にします。コケムス2FのKauppa&Kahvilaは、ショップも含めて、パーク内で一番フィンランドのデザインを意識してつくった場所なので、フィンランドを象徴する木である白樺が使われた脚の部分の曲木も美しい、
国民的に愛されている椅子を選びました。


Tipton @Kokemus2F Paja(ワークショップ)

フィンランドのArtek社の親会社であるVitra社(Vitra自体はスイスの家具メーカー)の製品Tipton(ティプトン)は、頑丈で経済的なプラスチックを用いていますが、椅子に座った時、身体の体重移動により姿勢を安定させながら前傾することができます。

前方に傾斜する座り方は、身体への負担を軽減して、血液の循環を促し、集中力を高める効果があるということなので、コケムス2FのPaja(ワークショップ)で長時間滞在していても身体に負担になりにくかったり、集中力をもってゲストにものづくりをしていただければということ、色が赤なのは、創作の刺激になればと思い、選んでいます。

また、スタッフ目線では、軽くてスタッキングができるので、レイアウト変更などで動かすときにも良いかなという理由もあります。

まず、ムーミンの物語が誕生したフィンランド含む北欧の文化背景を簡単にお伝えできればと思うのですが、冬眠するムーミン一族と違って、北欧の人々は冬の時期が寒くて暗いため多くの時間を屋内で過ごすこと、また、家族や友人との時間を大切にするライフスタイルがあり、北欧の人々はそのライフスタイルを豊かにするための、家具や食器・日用品のデザインにもこだわる傾向があります。


おまけ(Kokemusではないですが)

CH24(Yチェア) @はじまりの入り江 Lettula(パンケーキレストラン)個室

デンマークで1950 年にハンス・J・ウェグナーによってデザインされた今もなお世界中で愛され続ける、名作椅子です。
Yの字に見える背もたれの形状から、「Yチェア」の愛称で世界中に親しまれるようになりました。年月が経過とともに木肌の表情が味わい深くなり、使い込むほど愛着も湧き、生涯使い続けることができる名作チェアです。

美しい後脚のフォルムや、丸棒を曲げて形作られた笠木の優美なラインなど、ウェグナーによるデザインの特徴がよく表れています。座面は、職人の手仕事によるペーパーコード張りで、座り心地は柔らかです。

このLettulaの個室は、オープンエリアは開放的な広がりの空間ですが、個室の入口は、その先に小さな家が見えてきます。個室の扉を開けて入った先に、温かみのある光と素朴だけど機能はしっかりとした名作椅子が置いてある、隠れ家のような場所でおもてなしができればと思い、選びました。

これはムーミンの家や調度品にも言えますが、北欧の家は家具や建具に天然木を多用すること、居心地を重視した温かみのある配色など、古くは自然と共生してきた時代もある私たち日本人にとってもほっとするものが多く、今や「北欧家具」は1つのカテゴリとして、高い技術と普遍的な優れたデザインとして日本でも人気なのは言うまでもありません。

ムーミンの物語の作品性も北欧の名作椅子も、良いものは長く愛され、時代を経ても魅力は色褪せず、どちらも「普遍的」であることが共通しています。
ムーミンと同じように世界で長く愛されてきている「人のため」を思ってつくられた名作椅子の数々。

次に訪れたときに、広大な自然に囲まれたこのパークの中で一息つける場をひっそりと演出する声なき立役者の名作椅子たちの存在を少し意識いただけたら、うれしいです。


※主題がデザインの話なので書こうか迷いましたが、このご時世で気にする方もいると思いましたので、記載します。手すりなどは、スタッフが日々消毒をしています。



ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください

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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)

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