「ムーミンバレーパークのAto Z」【D】Diorama(ムーミン谷のジオラマ)
ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」。
今回は【D】。
パークでは主役級の存在感を放つ、展示施設Kokemus(コケムス)にある
「ムーミン谷のジオラマ」=Diorama(ジオラマ)をピックアップしました。
唯一無二のジオラマ
ムーミン作品の一番のオリジナルというのは、原作の原画に他ならないですが、ムーミン作品の原画はほぼ、フィンランドのムーミンミュージアムが所蔵しており、お借りすることはできても、ここだけのオリジナルにはなりません。
日本で唯一のムーミンに関する常設施設となるコケムス。「展示施設」と名乗るからには、パークならではの所蔵品をつくろう!この場所ならではのオリジナルをたくさん散りばめよう!という思いがありました。
ムーミン谷の地図を手がかりに
背景のベースにしたのは、ムーミンの原作の小説を読んだことがある方ならおなじみのムーミン谷の地図。この地図は、目次と物語の本文の間によく登場しているもので、物語によって季節や舞台となる場所が違うので、いくつかの地図があります。
これらの地図を参考に、完全な再現というよりは、エッセンスを取り入れながら、かつ、登場キャラクターたちとそれにまつわるシチュエーションを散りばめつつも、それぞれの地図に出てくるような四季折々のシーンを構成しました。
ムーミン屋敷のレイアウト
中央に配置されたシンボルのムーミン屋敷は、常にゆっくり回転していて、屋敷の半分は外壁、もう半分は屋敷の中の断面図のようになっています。この間取り‐各階のレイアウトがムーミンバレーパークのムーミン屋敷と同じ、ということはご存じでしたでしょうか。
ムーミン屋敷は原作さながらにフォルム重視で建てたので、入場可能な人数に限りがあり、パークを訪れていただいた方全員に入っていただくことが難しかったため、このジオラマを見れば、家の中がどのようになっているかわかるようにしました。
特に、屋根裏のムーミンパパの書斎は、ムーミン屋敷のアトラクションでは
潜望鏡では覗けるものの、梯子を上っていくことはできないのですが、こちらのジオラマでは、どのようになっているのか見ていただけます。ムーミン屋敷のアトラクションに行った後に、こちらのジオラマを鑑賞しながらご自身も実際にあの世界の中にいた…、という余韻に浸っていただくこともできると思います。
移り変わる季節やできごと
そして、このムーミン谷の世界では、15分おきに変化が起きます。
お話の中でも象徴的な、彗星が迫ってくるシーン。
日が沈んでいく、夕方。
雪がしんしんと降り積もる冬。
それから、北のエリアならではの、白夜。
ムーミンの原作が生まれた北欧も、夏至の季節に太陽が沈まない白夜の時期が訪れます。
白夜、と言っても、色は白いわけではありません。
ピンクと紫がまざったような印象的な空になります。
夏至の白夜の時期を舞台にした『ムーミン谷の夏まつり』もありますが、
白夜のときの真夜中の空の様子がいちばんよく伝わるのは、2018年のムーミンの日にフィンランドで限定発売されたアラビアマグだと思います。
ムーミントロールとムーミンママを背に、ほんのりピンク色の空と、陽に照らされた海の、水色とも紺色とも言えないような青色のコントラストがとっても素敵なマグです。
そんな、ムーミンたちが夏の時期に過ごしている不思議な白夜の雰囲気を、
ジオラマを通して、訪れたゲストのみなさんにも伝えたいと思いました。
実は、その白夜の微妙な色のニュアンスを業者さんに伝えることと、
それをジオラマで再現するということがなかなか手こずり、何度もテストをして、納得のいく白夜の光の色を作るのに一番試行錯誤しています。
さて、実際にどのようになっているかは、ジオラマ前でご体験していただければと思います。
キャラクター大集合!
そして、原作の物語の地図と違うところは、ジオラマにはたくさんのキャラクターたちが登場しているところです。
まず、原作から、どのキャラクターのどのシーンを再現するか洗い出し、シーンリストを作成。
挿絵から立体にすると見え方も変わるので、「マケット」と呼ばれる小さな模型を作り、フィンランドのムーミンキャラクターズ社に確認をしてもらいました。
形の次は、色です。原作の挿絵は白黒。
メジャーなキャラクターたちは、色がわかっていますが、マイナーなキャラクターたち(例えば、ありじごくは?おさびし山の天文台の学者は?竜のエドワードは?)は、こんな色なのではないか?と予想し、迷ったらどちらの色がいいだろうか?という気の遠くなるような答え合わせを全部のキャラクターで行っています。
季節も年代もこの世界ではパラレルです。
ムーミン谷を恋しく思う11月のホムサもいれば、若き日のムーミンパパたちと冒険にでかける海のオーケストラ号も登場、彗星が近づいているときにムーミンたちが訪れた森の中の売店もありますので、季節・時代考証はどうかお控えいただき、何も考えずに、全部ミックスした空間を楽しんでいただければと思います。
また、キャラクター数ですが、どれくらいの数が登場しているのかは、
数え方によって変わりますので、ここでは敢えて明言は避けさせていただきます。
(ニョロニョロは全部の群れの合計で1とするか1つ1つ数えるのか、野外ダンス場にいる名もなき生きものたちは全部数えるのか、鷲の親子は親鷲と子鷲2匹で3匹なのか鷲カテゴリで1とするのか…など、いかに複雑かおわかりいただけるかと思います)
ご参考までに、小説に登場するキャラクターはほぼ網羅しています。
コミックスからはスティンキーが、絵本からはスサンナが登場しています。
そう、ここは、小説・コミックス・絵本からのキャラクターが一同に会している、「夢の競演!」の場でもあるのです。
ジオラマの世界がもっと近くなるオリジナル絵本
2020年3月にパークの1周年を記念して発売したジオラマを舞台にした物語絵本『ムーミン谷の暮らし』では近づかないとなかなか見えないシーンも登場しています。(例えば、野外ダンス場など、小さな生きものたちがとってもかわいいです)
こちらの絵本については、いつかのキーワードとしてご紹介できればと思います。
そういえば、ジオラマの中に…
ニョロニョロの群れから離れた「はぐれニョロニョロ」が1体だけどこかにいますので、ぜひ探してみてください!
ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください
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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)