「ムーミンバレーパークのAto Z」【I】Ivana Helsinki スタッフの制服ブランド
ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」。
【I】は、「Ivana Helsinki」(イヴァナ・ヘルシンキ)。
スタッフが着ている制服をデザインしているフィンランドを代表するブランドで、この制服だから働きたい!というスタッフもいるほどパークにとっては欠かせないキーワードです。
このブランドを選んだ理由
「Ivana Helsinki」は、1998年にデザイナーPaola Suhonen(パオラ スホネン)と姉Pirjo(ピルヨ)により設立されました。
北欧のレディースブランドとしては、唯一のパリコレクションに正式に参加しており、世界から高く評価されています。
スタッフの衣裳もムーミンの世界感を再現する演出と捉え、
ゲストに‘ムーミン谷’への没入感を感じていただく、ということや、
施設とともに制服も長くスタッフにも愛されること、
スタッフも笑顔で生き生きと働いていただきたいことを目的に、
フィンランドでも長年ムーミンのデザインを手掛けていてムーミンの世界観への理解があり、カラフルな色使いや大胆なパターンで本場の北欧を表現できるIvana Helsinkiにデザインを依頼しました。
Ivana Helsinkiは、フィンランドをベースに活躍しており、幼少期の思い出や夢、北欧の自然がプリントデザインに反映されています。
幼少期の思い出、北欧を彷彿させる自然環境というのは、トーベが生み出したムーミン作品にも同じく影響が色濃く出ていたり、また、Ivana Helsinkiがブランドとして面白いと感じたのは、テキスタイルだけでなく、アパレル・グラフィック・映像制作、はたまた音楽フェスまで幅広く「アート」に関わる分野にまたがってデザイナーのパオラ自身が手がけています。
マルチな分野で表現をしている、というのは、画家、小説家、作詞家、舞台芸術家、商業デザイナー、映像作家など、多くの才能を持つトーベとも親和性があるように思います。
Ivana Helsinkiとは、2017年から、デザインの打診などを始めて、
細かいやりとりを積み重ねながら、2018年の初めころにフィンランド・ヘルシンキでも打ち合わせをしています。
今は別の場所に移転していますが、
倉庫のような広い空間にオフィス機能やギャラリーを兼ね備えた、
ここからいろんなクリエイティビティが生まれてきそうな素敵なオフィスでした。
打ち合わせでは、これから作るムーミンバレーパークのコンセプトや
ビジュアルアイデンティテイ、エリアのテーマカラーなどの説明と、
どの場所に、どのような体験ができる施設が建てられる予定かということを
すべて細かく理解してもらい、デザインの発想を広げてもらいました。
ちなみに、全体を通してIvana Helsinkiに依頼をしたのは、レディース・メンズ、という分け方ではなく、レディース・ユニセックスという分け方でデザインをお願いしました。
ムーミンに登場するキャラクターにはジェンダーの区別や差別もなく、
トーベ自身も性にとらわれない生き方をしていたため、
女性スタッフがパンツを選択しても良いですし、
個人的には、スカートのような洋服を着ているヘムレンさんのように、
男性スタッフがスカートをはく選択があったってよいと思っています。
そんなリクエストを受けて、Ivana Helsinkiのテキスタイルは、ムーミンの物語を彷彿とさせる風景やキャラクターが描かれ、ストーリー性がありユニセックスなデザインを生み出してくれました。
この後に、デザイナーのPaolaからのコメントも紹介させていただきますが、こちらの意図をきちんと汲み取ってくれた上で、ムーミンの基本的な世界観をしっかり理解しながら見事に制服のデザインとして昇華させてくれたことがわかります。
「Ivana Helsinkiのオリジナルであることはもちろん、
シルエットや色などムーミンの世界とムーミンバレーパークをつなぐデザインを意識しました」
と制服の着想を語り、
「色はすべてトーベ・ヤンソンの原画から選び、
パーク内のビジュアルアイデンティティカラーや雰囲気と調和させています。
形は、ムーミン物語の登場人物たちが身につけているような中性的であり、
ゆったりとしたシルエットと、動きやすさを重視してデザインしました。
また、帽子、スカーフなどのアクセサリーも、
すべてトーベ・ヤンソンのオリジナルの原画に基づいています」
パークだけのオリジナルパターンとデザイン
これから少しだけ、パターンとデザイン・実際にスタッフが着用している写真をランダムにご紹介させていただきますね。
エリアや各施設の機能に合わせて制服の色使いを変えたり、アトラクションなどは個々の世界観があるため、パターンなしでデザインしてもらっているワードローブなどもあります。
最初のパターンは、ムーミンエーカー というタイトル。
花の中にちいさなムーミントロールがいるのをお気づきでしょうか。
次は Mymble in the jangle ジャングルのなかのミイ というパターンです。リトルミイだけでなく、いろんな生きものがまざっていますね。
こちらはFlower & Leaves 花と葉っぱ、というパターンですが、
ムーミンの挿絵をよくご覧になっている方にとっては、
あのシーンのあの花がこのように切り取られてパターン化されているとは、
しかもキャラクター不在!というのはなかなかのインパクトなのではないでしょうか。
答えは…『ムーミン谷の夏まつり』の池でのムーミントロールのワンシーンからでした。
ほかにも、絵本『さびしがりやのクニット』のワンシーンで使われているアートを使用したスカーフを、絵を見せるのではなく、アクセントで使うという贅沢なデザインもあります。
ムーミン屋敷の制服は、ムーミン屋敷自体が物語の中でもシンボル的な存在のため、そのインパクトに負けないよう、意識的に華やかなパターンにしてもらいました。
アウター、上着も、良い意味で「テーマパークらしくない」かっこいいデザインになったと思います。
“トーベ・ヤンソンの作品に含まれているフィンランドの自然と群島、個性が鋭く表現されている敏感なセンスとその特徴的なビジュアルを、ワードローブにイメージとして反映している”
2018年の8月に、Ivana Helsinki がパークのデザインをすることを発表した際、デザイナーのPaolaから、ちょっとしたメッセージ動画をもらっています。
これは、どの分野の仕事にも共通してくることかもしれませんが、
何かを依頼して、アウトプットされてくる提案内容―デザインやテキストなど含むすべての「表現」―に対して、その制作担当者がどれだけそのコンテンツに対して理解があるのか、そして愛や熱量、情熱をもっているのか、というのが、出てくるものや、ある程度のやりとりで、良くも悪くも、見えてきます。
というか、浅い、表面的なものである場合は、やっぱり、バレちゃいます。
それは、最終的には、ゲストにも、見抜かれてしまうことで、
誰にとっても良い結果にはならないことは明白です。
もちろん、こちら側も、最初にきちんとインプットをする必要もありますし、出てきたものがこちらの意図している方向とずれているなら、
しかるべき方向へ根気よくディレクションが必要になるため、
まずこちら側の知識や理解がないと話にならないという前提があります。
判断する側も、大きな責任があります。
ここの場所の場合は、もちろん、「ムーミン」についての作品・世界観や、
作者がうまれた北欧への深い理解がないといけないわけですが、
動画内でデザイナーのPaolaがムーミンに対して語っていることは、
ほぼ完ぺきに近く、ムーミン作品へのリスペクトを持ちながら、
こちらの伝えたいことを理解した上で、
Ivana Helsinkiらしさもしっかりと出してくれたことにより、
期待を超える素敵なものが出てきたので、
気持ちよくプロジェクトを進めることができましたし、
なにより、パークにとっても、とても幸福なことでした。
衣裳もムーミンの世界感を再現する演出の1つ。
細かいこだわりが詰まったいろいろな制服。
次回の来訪の際に、ぜひ、ご注目ください。
幻の商品になるかも?パークだけのIvana Helsinkiグッズ
実は、このIvana Helsinkiによるパークオリジナルのパターンを、
みなさまにもお手元でお楽しみいただけるものがあります。
制服と同じパターンを使ったTシャツ、ハンドタオル、マスキングテープなどの商品です。
こちらは、2019年3月のムーミンバレーパークのオープン記念に販売しており、現在はもう追加生産は行っていないため、店頭で販売しているものが終わり次第、終了となります。
既にお持ちの方は、将来、貴重なものになるかもしれませんし、
パークで見かけた方、ラッキーかもしれません…!
※ムーミンバレーパークでは、通常、制服のことを「ワードローブ」と呼称していますが、今回は伝わりやすい表現で「制服」と統一表記しました。
ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください
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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)