アンブレラスカイ・デザインプロジェクトをもっと楽しむためのお話
メッツァビレッジ、ムーミンバレーパーク両エリアで開催中の「メッツァ アンブレラスカイ・デザインプロジェクト2020」。
大好評のプロジェクトについて、初年度のこと、アートディレクターの鈴木氏のコメント、それぞれのエリアの制作コンセプトやエピソード、アンブレラスカイ´デザイン’プロジェクトであるということ、「黒」を使う理由、そして今なぜアンブレラスカイなのか、を改めてご紹介します。
2019年に初開催した「森と、湖と、アンブレラと。」
メッツァビレッジの入口の道メッツァティエで、1000本のアンブレラと色柄の道が織りなすカラフルな世界は、憂鬱になりがちな梅雨の時期を特別なものに変えました。
デザインをしたのは、marimekkoなど世界的なブランドでデザインも手がけるテキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏。
こちら(↓)の動画で、貴重な鈴木氏のインタビューや、ドローンで撮影した様子がご覧いただけます。
鈴木氏と傘の運命的なエピソード
鈴木氏は、自身のブランドで長年傘をデザインしており、10年ほど前に遡る初年度の展示でお客さんから「海外には頭上がカラフルな傘で埋め尽くされた街があるらしいですよ」と紹介されたそうです。検索してみると、色とりどりの傘が街中の通りの頭上を埋め尽くした画像が見つかりました。それがアンブレラスカイ発祥の場所であるポルトガルの小さな街、アゲタの画像だったそうです。
もともとは夏に開催される芸術祭で強い日差しを少しでも遮る事が目的だったと言う説もありますが、カラフルな傘たちは来場者の目を楽しませ大きな話題となり、これを目当てに遠方からたくさんの人たちが訪れるようになり、今では観光名所として名高い存在となっているアゲダ。
いつかアンブレラスカイを手がけてみたいとその時ぼんやりと思っていたそうで、今回の話が来た時に、「よくよく傘に縁があるのかもしれない」と思ったそうです。
そしてパワーアップした2020年。日本最大級のアンブレラスカイ
今年のアンブレラスカイは「メッツァビレッジ」だけではなく「ムーミンバレーパーク」でも同時開催。300mの傘の道とアンブレラの総展示本数は約2,000本、日本最大級となる圧巻の規模で実施しました。
「アンブレラスカイ」ではなく、「アンブレラスカイ・デザインプロジェクト」であるということ
全国各地でも、さまざまな「アンブレラスカイ」が開催されていますが、なぜ、私たちが「アンブレラスカイ・デザインプロジェクト」としたのかについては、世界的にも活躍するデザイナーの鈴木氏をアートディレクターに迎え、コンセプトメイキングに基づき、色の配置や素材の違いなどにこだわって、アンブレラスカイを「アート」としての位置づけをしたからです。
ムーミンバレーパークとメッツァビレッジそれぞれに「ムーミン谷とアンブレラ」の'陽だまりの道’、「森と、湖と、アンブレラと。」の'木漏れ日のトンネル’として、展示タイトルとテーマ展開をしています。
太陽や光をモチーフにしたムーミンバレーパーク、森と湖をモチーフにしたメッツァビレッジの対照的なコントラストは、両ゾーンを通してドラマチックかつダイナミックに変化していきます。
木漏れ日や光の反射、お天気模様により、日々変化するアンブレラスカイを、メッツァ全エリアを通して、余すことなく楽しんでいただけます。
ムーミンバレーパーク「ムーミン谷とアンブレラ」の'陽だまりの道’
ムーミンバレーパーク側は華やかな暖色と黒と白のモノトーンで展開されています。
「陽だまりの道」をテーマにデザインされたアンブレラスカイにはムーミンをはじめとするキャラクターも登場し、まるで華やかなお祭りのよう。200mに渡る長さで展開される道を来場者がキャラクターを見つけながら歩いて行くと、傘の色がダイナミックに変化して高揚感溢れる風景を体感いただけます。
最後のモノトーンでまとめられたエリアは、ニョロニョロの雷スプラッシュエリア。ニョロニョロたちが大好きな雷鳴がとどろくと、」ミストがふりそそぐ、エンターテイメント性に溢れたアンブレラスカイです。
メッツァビレッジの「森と、湖と、アンブレラと。」の'木漏れ日の道’
暖色系でまとめたムーミンバレーパーク側とは対照的に、メッツァの入り口から湖に向かって行く道、メッツァティエは両側から木々がせり出し、頭上を覆います。歩いていると木漏れ日が差し込む様が美しく、これをそのままアンブレラスカイで再現しています。
そして今回は、同じ色でも、透明の傘と不透明の傘を組み合わせています。
例えば青色。
同じ青色でも、素材を変えることで、表情が多彩になっているのがご覧いただけますでしょうか。光と色のコントラストが美しいアンブレラスカイが出現しています。
黒でつながる2つのエリア
今年のこだわりは、アンブレラスカイに「黒色」を入れたこと。
ともするとカラフルとはかけ離れてしまう黒ですが、北欧では、アクセントに黒が使われていることがよくあり、黒の使い方がうまいなあと思うことが多々あります。
例えばマリメッコのパターンなども象徴的なものもありますが、建築、インテリア、グラフィックなども、意外なところに黒を使っているものがあり、アートディレクターの鈴木氏とも、黒はぜひ入れたいよね、という思いが共通していました。
そして、メッツァビレッジとムーミンバレーパークの両エリアを繋いでいるのが「黒」。
黒を入れたことで、よくありがちなカラフルなだけのアンブレラスカイにとどまらず、甘くなりすぎずに、洗練されたデザインのアンブレラスカイが誕生しました。
黒をアクセントに使ったことは、とても、「北欧らしさ」=「メッツァらしさ」が出たと思います。
そして、メッツァならではの「非直線の道」。
坂道や曲道、宮沢湖をとりまく地形に沿ってダイナミックに変化する空間体験は世界中の様々なアンブレラスカイでもあまり見る事の出来ないオリジナリティーあるものとなりました。
なぜ今アンブレラスカイなのか
カラフルな色は、人の気持ちを上げるビタミン
普段は雨を遮る、日差しを遮るという機能的な用途で使用される傘。
アンブレラスカイでは普段の機能とは違ったカラフルな装飾を目的として使われていますが、「綺麗なもの、美しいものを見たい」という芸術に対する人間の本能的なものは、いつの時代でもあります。
その人間らしさというものは、逆にどんな状況でも失ってはいけないものだと思います。
鈴木氏は、「カラフルな色は人の気持ちを持ち上げるビタミンのようなもの」と話します。
さまざまなことが制限されているように感じたり、気持ちが憂鬱になってしまいがちな昨今の世の中であるからこそ、訪れてくれた人たちに、私たちメッツァのアンブレラスカイが、ほんのちょっとでもハッピーな気持ちを感じてもらえるような気持ちのビタミンとなれば、幸いです。
<開催概要>
メッツァ「アンブレラスカイ・デザインプロジェクト」
◆「ムーミン谷とアンブレラ」
場 所:ムーミンバレーパーク ※入園ゲート入ってすぐ
展示期間:2020年6月4日(木)~9月6日(日)
展示本数:約1,200本
展示距離:約200m
◆「森と、湖と、アンブレラと。」
場 所:メッツァティエ ※駐車場からメッツァビレッジへ行く坂道
展示期間:2020年5月22日(金)9月6日(日)
展示本数:約800本
展示距離:約100m
<アートディレクター>
鈴木マサル氏/Masaru Suzuki
テキスタイルデザイナー。2002年、有限会社ウンピアット設立。2004年からファブリックブランドOTTAIPNUを主宰。自身のブランドのほか、マリメッコ、ムーミン、ユニクロ、カンペール、ファミリア、Zoffなど国内外の様々なメーカー、ブランドから作品をリリース。2015年、富山の魅力をパターンデザインで表現した「富山もようプロジェクト」で第35階新聞広告賞を受賞。2016年、ミラノで開催されたMilanDesinWeek2016にてMilanDesignAward2016”BEST ENGAGEMENT by IED”を受賞。誠文堂新光社より作品集「鈴木マサルのテキスタイル」を出版。2017年三菱地所アルティアムにて展覧会「鈴木マサルのテキスタイル展」を開催。東京造形大学造形学部デザイン学科 教授。
文:川崎 亜利沙
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