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「ムーミンバレーパークのAto Z」【Q】Quote(ムーミン作品の名言やことば)

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」

【Q】Quote(クオート)。英語では、本などからの引用という意味でも使われますが、今回は、ムーミン作品の名言やことば、という観点からご紹介します。

ムーミン作品の挿絵とともに、物語を形づくる重要な役割を担っているのが、「ことば」です。

個性豊かな仲間たちが登場するムーミンの物語は、読む人に多様な気づきを与えてくれます。その気づきは、ときには読み手それぞれの人生や、生活においての悩みを解き明かすヒントになることもあります。

そんな、気づきや発見をゲスト自身がそれぞれ見つけていただけるように、パーク内でも、原作の「ことば」に触れることができる場所をあちこちに点在させています。

ムーミンの原作は、作者トーベの母語であるスウェーデン語で綴られています。
私たちも、意味がわからなくても、ハングル文字やアラビア文字などから異国感が伝わることもありますよね。
そのため、その原語がわからなくても、本来の原作の雰囲気を感じてもらえるよう意図的に、スウェーデン語を入れている箇所もあります。


のぞいてみよう、ゲートの裏側

北欧のライフスタイルを体験できるメッツァビレッジから、パークへ向かって歩みを進めると見えてくる、本の形をしたウエルカムゲートは、ゲスト自身がムーミンの物語の世界を追体験するために今から本(物語)の中に入ろう!というコンセプトですが、ゲートのキャラクターの裏側には、そのキャラクターを象徴するようなエピソードのことばを原作から選んでいます。こちらは、原作をリスペクトして原語のスウェーデン語で、これは、あまり馴染みのない言語だからこそ、非日常の世界に入っていっていただくための導入として使用しています。


コケムスでは、ことばの多様なアプローチを

展示施設コケムスは、視覚・聴覚的に伝えるところはスウェーデン語、展示を理解してもらうための説明の引用としては日本語と英語を、それぞれを使い分けて配置しています。

3階の体感展示、ムーミンのカラフルな絵本の世界の「それからどうなるの?」エリアでの原作のことばは、スウェーデン語。

これは、本の絵本の世界に入っていくものなので、感覚的に体感してもらうことを優先しており、読み聞かせで聴こえてくるナレーションも、スウェーデン語でトーベ自身が語っているものです。
2階の常設展「ムーミン谷のギャラリ―」、現在開催中の企画展「ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル展」での原作のことばは、日本語と英語からの引用です。ここでは、小説や絵本、コミックスなどの原作などの挿絵とともに、ムーミンの物語の魅力的なことばを伝えることが優先なので、感覚的な理解ではなく、内容をしっかり理解いただくことを重視して展示をつくっています。


あなたの心に響く、ベンチのことば

園内を散策して、ふとベンチに座ったときに、目にすることができるのも、原作のことばの数々です。
これは、パークがある飯能市の特産品である「西川材」でつくられた木のベンチ。
ベンチの脇には、日本語とスウェーデン語でのそれぞれの引用が書かれた銘板をそっと配置しています。
ことばの選定は、パークのロケーションに合わせて、1つ1つ選んでいます。
灯台の近くだったら、海を愛するムーミンパパの海へのことばだったり、ヘムレンさんの遊園地なら、ヘムレンさんのことばだったり、はたまた、入口のほうには、冒険のはじまりをさらにワクワクさせるようなスナフキンのことばだったり。ベンチを見て、どうしてこのことばが、ここにあるのかな、ということを想像していただくのも、楽しみ方の1つかもしれません。

また、たまたま座ったベンチに書かれていたことばが、今の自分が必要としている内容にぴったり合うものが見つかることもあるかもしれませんし、何回も同じベンチにすわってそのことばを目にしていても、そのときどきで感じ方が変わることもあるかもしれません。
同じことばだとしても、ゲスト自身の変化とともに、捉え方が変わってみえることがあるというのは、ことば独自の特性のおもしろさと、作者トーベの才能にほかなりません。


Reading, writing and the Moomins(読み書きとムーミン作品)

もう少し、トーベのことばに対する才能について、掘り下げてみましょう。

ムーミン作品の生まれ故郷フィンランドのムーミン公式サイトでは、ムーミンのアルファベットのデザインシリーズを新しくリリースしており、ムーミン作品、トーベの生い立ちを踏まえて、読み書きの大切さ、ことばが持つ力の重要性を紹介している記事があるので、ご紹介します。

トーベの自伝的小説といわれる『彫刻家の娘』(1969年)からも、トーベは幼い頃から本を読み続けていたことがわかります。子供の頃は、家族が寝ている間にも本を読めるように、懐中電灯をベッドに持ち込んでいました。好奇心旺盛な彼女は、ワクワクするような物語の最後を翌日まで待つことができなかったのです。
トーベが成長するにつれ、ヤンソン家でもトーベの友人たちの間でも、常に本の交換や議論が行われました。だからこそ、トーベがストーリーテラーとなり、世界中の何百万人もの読者に愛されているムーミンの本を執筆し、イラストを描いたのも不思議なことではありません。
しかし、すべてはペンと紙から始まったのです。私たちは、トーベのような好奇心を次の世代に呼び起こし、読むこと、書くことの喜びを広めたいと思っています。
自分自身を表現できることは、世界で最も重要なことの1つです。自分の希望や夢を伝え、他者と関わり、時代の大きな問題に取り組み、変化を生み出すことができるのです。
自分自身を表現するためには、まず読み書きを学ぶ必要があります。
幼少期に言葉を愛する心を育むことは、共感力を高めたり、異文化や生活様式への理解を深めたりするなど、他のメリットももたらすことが証明されています。つまり、読み書きは若い人の視野を広げるのです。

Reading, writing and the Moomins より)


ことばを扱うことは、自分自身を表現できること。変化を生み出すことができること。
そして、なんでも生み出すことができる可能性を秘めている―
パークの入口にある「ムーミンバレーパーク」と書かれているモニュメントを、インク壺とペンのデザインにしたのも、物語のすべてはペンと紙からはじまったということになぞらえ、想像力はゼロから始まりどんな可能性もあること、なんでもできること、訪れたゲストも、自身の冒険のはじまりを自分の想像力でいかようにも広げることができるという思いを込めました。

読書の秋、改めて、パークに散らばるムーミンの「ことば」に向き合い、自分とも向き合ってみるのはいかがでしょうか。


ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください

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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)

ムーミンバレーパーク

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