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【ネタバレなし】ラトビア映画『ルッチと宜江』(メッツァ北欧シネマ倶楽部 vol.5)


北欧8ヶ国の夏の伝統を集めた「メッツァの夏至祭2024」期間中に、エストニア・ラトビア・リトアニアの文化に触れることができる「バルト三国ウィークエンド」で、ラトビア映画『ルッチと宜江(のりえ)』が上映されます。

ラトビアの民族「スィティ」を研究する日本人の宜江(のりえ)さんが、人口200人の村アルスンガ村のルッチというおばあちゃんの家で暮らす日々を記録したドキュメンタリー映画です。

今回は、本作の主人公のひとり、今もラトビアに通い続けている宜江さんから直接いただいた回答を引用しながら、ラトビアの文化や作品についての見どころをご紹介します。



ドキュメンタリーでもあり、ラトビア歳時記でもあり

2015年に公開されたこの映画ですが、撮影期間は2011年~2014年。
宜江さんが2009年からラトビアに住みだしてから、修士論文を書き終える頃に映画の話があり、実際にルッチと過ごした様子を再度再現する形で、映画の撮影がされたそうです。

劇中のブランコ

ルッチが住むのは、首都リガからバスで4時間ほど行ったところにある人口200人のアルスンガという村。車を持っている人は、村の小さな売店に買い物に行きますが、ルッチのような車を持っていない人のところには、食料の訪問販売の車がトラックがやってきて、買い物をするシーンも登場します。
日本の田舎でも30年ほど前には、訪問販売の車を見かけたことがありますが、最近はオンラインショッピングが流通して、ほとんど見かけなくなり、ルッチの現実が、まるで昔の物語を見ているかのようでした。

庭の畑に生えているディル(ハーブ)やベリーを摘みに行ったり、家でカッテージチーズを作ったり、昔ながらの智慧と自然の恵みを活用し、最近の日本人の憧れワードでもある「丁寧な暮らし」を地で実践しているルッチ。

この映画は、ふたりの暮らしを垣間みながらも、ラトビアの風習や四季折々の自然の様子を伝える歳時記でもあります。

そして象徴的に登場するのは、庭にある大きなの木にかけられたブランコ。
新緑の中、宜江さんが乗っているのをルッチが押してあげるシーン、冬の雪の中、宜江さんが帰国してポツンと佇むシーンなどが登場し、四季が移り変わっていくことを教えてくれます。

ルッチの愛犬「バステ」もところどころで登場しますのでご注目ください。


「歌う民族」ラトビア人

劇中には、車を葉っぱや草で飾り付けして、街へ繰り出す面白いシーンも登場します。
それは、首都リガの町で開催される世界無形文化遺産の「歌と踊りの祭典」に参加するところ。この時は、3万人がリガに集まり、大合唱をするそうです。

首都リガの街並(出典:ラトビア政府観光局)

これは、5年に1度しか開催されない祭典なので、それがちょうど映画に収められているというのは、とても貴重ではないでしょうか。

劇中には、さまざまな歌のシーンも登場します。
ラトビア人は、別名「歌う民」と言われ、日々の生活や自然、年中行事や冠婚葬祭を歌で伝えてきました。ラトビア民謡(ダイナ)は、120万曲以上あり、子どもたちは合唱を通してラトビア語や暮らしの知恵を身につけていきます。
ラトビア人にとって歌は、精神を形作る大切なもので、そして、彼らの日常のものでもあることが、作品を通してよく伝わってきます。


ラトビアの夏至

宜江さんがラトビアに通うきっかけとなったのがまさに「夏至」の頃だったそうです。初めてアルスンガ村を訪れ、そこで見たスィティ(アルスンガ村に住む人々のこと)に惹かれ、スィティの研究をしたいと、翌年からアルスンガ村を何度も訪問するようになります。

地方性豊かなラトビアの民族衣裳(出典:ラトビア政府観光局)

ラトビアの夏至は「リーゴ」と言われ、男性は柏の冠、女性は花冠を作ってかぶります。その冠は1年家に飾り、翌年に松明として燃やします。

夏至の日は、ビールとチーズ、黒パンを食べてかがり火を囲い、歌や踊りをして夜通し過ごします。

そんな夏至の象徴のかがり火や踊りは、メッツァの夏至祭期間中でも体験できますよ。

そして、飾らないラトビアの暮らし、飾らないふたりの関係を垣間見ることができる映画『ルッチと宜江』の貴重な上映機会を、どうぞお見逃しなく。

『ルッチと宜江』上映情報
監督:イナーラ・コルマネ/2015年製作/65分/ラトビア
■開催日:2024年6月16日(日)
■時間:①13:00~14:05 ②16:00~17:05
■場所:クラフトビブリオテック

〇かがり火の様子含む、夏至祭初日映像はこちら

〇バルト三国ウィークエンド情報含む、バルト三国の夏至の時期の映像はこちら(メッツァの夏至祭×エストニア・ラトビア・リトアニア政府観光局による現地の夏至祭映像との特別コラボムービー)


文:川崎亜利沙

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