「ムーミンバレーパークのAto Z」【X】X’mas(クリスマス)
ムーミン公式サイトにてムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」
【X】は「X’mas」(クリスマス)。
「ムーミンたちの世界には、宗教的な行事は存在しない。よって、クリスマスもハロウィンも祝わない」
これは、かつて、フィンランドのムーミンキャラクターズ社からはっきりと言われたことです。
世の中のイベントは、冬はクリスマス、近年では秋はハロウィン、で経済活動が盛り上がる時期に、ムーミンバレーパークでは、それをテーマにイベントができない。
さて、どのように季節イベントをして、訪れるゲストに喜んでいただくことができるのか・・・
「クリスマス」のない世界線
言われてみれば、冬にムーミン一族は冬眠をする習わしがあります。だからこそ、例外的に目が覚めてしまったムーミントロールの冒険譚が『ムーミン谷の冬』として、存在していますが、その中でも、クリスマスを祝う内容は出てきません。
その一方で、『ムーミン谷の仲間たち』の「もみの木」という短編には、今度は一家ごと目が覚めてしまったムーミンたちが、まわりが「クリスマス」というものを迎え入れる準備を慌ただしくしていることに気づき、自分たちもなんのことだかわからない「クリスマス」の支度をする、というお話も存在はしているのですが…
『ムーミン』の原作の世界観を守っていくのなら、要は、人間が祝う世界のものをムーミンたちは知る由がない、ましてや「サンタクロース」なんてものは別の世界の生きもので、他の世界のキャラクター同様、共存してはいけない世界線ということになります。
とはいうものの、作者トーベが生まれたフィンランドは、「サンタクロースがいる国」と言われているのは周知の事実です。一方で、フィンランドといえばムーミンという認知もある中で、たくさんの人がムーミンバレーパークのクリスマスに期待をするのも自然なことだと思います。
そこで、オープンした初めての冬を迎えたムーミンバレーパークのイベント「ウインターワンダーランド2019」では、“「クリスマス」を知らないムーミンたちが、自分たちの大切なものを飾り付けたウインターツリー”という原作「もみの木」から着想を得た「ツリー・オブ・オーケストラ」というコンテンツをつくりました。
ムーミンたちが一生懸命飾り付けたたくさんのオーナメントは、ちょっぴりへんてこで楽しいものばかり。あちこちに小さなクニット(はい虫)たちも。
ツリーから放射状に広がるランタンの下には、様々な楽器のシルエットが映し出されています。人が近づくと、それぞれの楽器特有の音色が奏でられ、木から流れる音楽と重なり、輝くイルミネーションへと変化します。
楽器を映し出したランタンの光の中に立つゲストが増えるほど、ツリーはにぎやかなシンフォニーを奏でるという参加型のコンテンツで、まだ誰も見たことのない特別なウィンターツリーでした。
季節の変化をお祝いすること
ムーミンたちには、たとえハロウィンやクリスマスの世界がなくても「それぞれの季節をお祝いする」という考え方はあります。実際に夏の時期には、夏至の夏まつりでかがり火を焚いたり、その前夜にはおまじないをすることもあります。(『ムーミン谷の夏まつり』)
クリスマスの話に戻りますが、「もみの木」のお話の中で、ツリーの上に星ではなくムーミンママの赤いシルクのバラが飾ってあることに対して、年上のクニットのおじさんが「てっぺんに大きな星があるといいんだがなぁ」と言い、別のクニットが「そうでしょうか」「考え方さえあってれば、それがあってもなくてもたいしたちがいはないんじゃないですか」と答えています。
この懐の深い言葉を借りるなら、たとえクリスマスやハロウィンはなくてもそれぞれの季節をお祝いするという考え方は同じ。
だからこそ、ムーミンバレーパークではハロウィンの代わりに秋の収穫を祝う「ハーベスト」、冬は「ウインターワンダーランド」「ウインターフェスティバル」、春は「スプリングフェスティバル」、夏は「サマーアートフェスティバル」などという四季を象徴することばを冠として、それぞれの季節を感じていただけるイベントをムーミンたちの世界観をヒントに手がけています。
「ツリー・オブ・オーケストラ」の中に登場する数々の楽器、特に北欧発祥の楽器については、以前、こちらの記事でも解説をしていますので、興味がある方はそちらものぞいてみてくださいね。
ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください。
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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)
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