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商業主義の「コマーシャル」ではなく、のんびり繋がる「コミュニティ」中心のエストニア発祥のフェスティバル(メッツァの夏至祭③)

北欧の夏至や夏の風物詩を体験できる「メッツァの夏至祭2024」では、毎週末、北欧各国からゆかりのゲストが来日し、夏至祭を盛り上げてくれました。前回の記事に続き、来日ゲストへの貴重なインタビューや、エピソードなどご紹介していきます。

6月15~16日の2日間は、「バルト三国ウィークエンド」として、南エストニアで開催される「森、音楽、言葉」がテーマのフェスティバル「Aigu Om!in Japan (アイグ・オム・イン・ジャパン)」のプログラムが行われました。
「アイグ・オム」とは、「時間はたっぷりある。ゆっくり自然体で生きよう。」というエストニア語のメッセージで、カタツムリがキャラクターになっています。


フェスティバルの発祥地・神秘の南エストニア

エストニアの首都・タリンから3時間ほど車を走らせた南エストニアには、森が広がり、バルト三国の最高峰の山・スールムナマギがあります。

エストニア最高峰・スールムナマギのタワーから

南エストニアのヴォル(Võru)地域は、東にロシア、南にラトビアに接しており、ユネスコの無形世界遺産にも登録された「スモークサウナ」「セトレーロ」と呼ばれる民謡など、独自の伝統が受け継がれています。

南エストニアのスモークサウナ

この地に魅力を感じたエストニアを代表するシンガーソングライターのマリ・カルクン氏が主催者として、2021年から「Aigu Om!」をスタートさせました。

現地では、毎年7月に大自然の中にいくつかの会場を設けて、3日間行われます。
地元の人はもちろん、普段は都市部で過ごしているけれど、町から離れて自然の中でゆっくりしたいという人々も集まり、子どもから高齢者まで年齢関係なく参加します。

コンサートや映画、海外からのアーティストによるパフォーマンスを楽しんだり、その地独特の伝統の釣りを見学したり、ワークショップに参加したり、地元住民が庭で収穫した食材を使って“おうちカフェ”がオープンするなどコミュニティを深めながら、まちを離れてそれぞれがゆったりと心地良い時間を過ごすのだそうです。これまでに最大で延べ2000人が来場した年もあったそう。

また、南エストニアには、他のエストニア地域では見られない、結界のような林があったり、十字架(カルシッコ)の木と呼ばれる聖なる地もあること、勾配があるのでクロスカントリーもできることが魅力と語ってくれました。

自然の中の聖なる地


アイグオム(ゆっくり過ごそう)だけど、運営は「ゆっくり」できない!?

イベント前には、マリ氏とターヴィ氏に開催への想いなどを聞く機会がありました。3年前にスタートした「Aigu Om!」ですが、開催のきっかけとなったのは、世界的に大流行した新型コロナウイルスだったそうです。
コロナの影響によりマリ氏の世界ツアーが中止になり、皮肉にもゆっくりと過ごす時間ができました。「春にはリンゴの木に花が咲くところを観察し、季節の移ろいを五感で感じる生活を送る中で、自然体で過ごす時間が増えました。この生き方を皆さんにもシェアしたいと思いました」と振り返ります。

マリ氏とターヴィ氏の二人三脚で作り上げてきたイベントですが、そこには大きな苦労もあるようで、「概念の中に”ゆっくり”という言葉が入っていますが、実際は準備や(自身の)出演で大忙しです」と苦笑い。
ですが、地元の人たちをはじめマリ氏の想いに共感する人々の協力により大切に育てられ、今では多くの人が日常では味わえない特別な時間を過ごす場となっています。

今年7月に開催された現地の「Aigu Om!」は、今年南エストニアが欧州文化首都に選ばれたということもあり、パワーアップ。
例年3日間の日程が1週間になっただけでなく、日本とエストニアの共通の自然観を探ることや、文化交流をテーマに開催され、日本からもアーティストや山伏、森の案内人などが参加し、お互いの文化の紹介や交流を深めました。

特別な年に、メッツァで開催された「Aigu Om!」

そんな現地でしか味わえない特別なプログラムが、「森」を通して日本のメッツァ(森)ともゆるやかにつながりました。
スペシャルライブ、森の専門家と一緒に森を探検するガイドツアーイベントをはじめ、知られざる魅力や森との関わりを紹介するトークイベント、食品や製品を販売するポップアップショップなど、エストニアがたっぷり詰まったプログラムとなりました。

メッツァでの開催前にマリ氏は、「私のルーツである南エストニアのヴォルの自然、言葉、感覚を歌にしています。ライブを通して、ヴォルの自然やアイグ・オムの概念をみなさんに感じてもらえるように歌いたいと思います。」と抱負を述べてくれました。

ターヴィ氏は、「エストニアでは森や自然がとても身近な存在です。ハイキングをして焚火を楽しんで、もちろんベリーやキノコも取り放題ですよ。今回のイベントではメッツァの森を探検し、森の歌を歌ったりエストニアの森のことや文化を紹介したいです。日本のこともぜひ聞きたいですね」と期待を寄せていました。

当日、宮沢湖を一望できるノルディックスクエアで行われたマリ氏のスペシャルライブ「Mari Kalkun JAPAN TOUR-メッツァの夏至祭編-」は2公演行われました。いずれも6曲を披露し、美しい歌声が響き渡りました。

また、その日は、駐日エストニア大使館のマイト・マーティンソン大使や、夏至祭装飾に携わったフィンランド人建築家のヤーッコ・トルヴィネン氏もメッツァに来園。
マリ氏とあわせて、3人で北欧の夏至の名物であるかがり火のセレモニーのスペシャルゲストとして参加いただきました。点火の際は、マリ氏が即興で歌も披露。
ここ日本の地で、エストニア・フィンランドー国を越えての交流の火が灯りました。

マリ氏のインタビューの中で、「Aigu Om!」は「コマーシャル(商業的)ではなく、コミュニティ中心」のフェスティバルであると言っていたことが、とても印象的でした。
都会の暮らしに疲れた人たちが、自然にあふれたその地に訪れたときに、地元にいるように、受け入れられる。それも、居心地よく。
そんな心地よさに人々は惹かれ、このフェスティバルは今までも続いてきたのだと思います。そしてこれからも、ゆるやかに続いていくイベントとなることを願ってやみません。

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「バルト三国ウィークエンド」プレスリリースはこちら
メッツァの夏至祭についてはこちら

「メッツァの夏至祭 2024」
■日時:2024年5月25日(土)~6月23日(日)入場無料
■詳細:https://metsa-hanno.com/lp/midsummer2024/
■共催:飯能市フィンランド協会
■後援:アイスランド大使館、エストニア大使館、エストニア政府観光局、スウェーデン大使館、デンマーク王国大使館、ノルウェー大使館、フィンランド大使館、ラトビア大使館、ラトビア投資開発庁、リトアニア大使館、リトアニア政府観光局、飯能市国際交流協会
■協力:飯能市立図書館、株式会社ハーモニーフィールズ、株式会社KADOKAWA

文・写真:大崎みなみ、川﨑亜利沙

「Aigu Om!in Japan (アイグ・オム・イン・ジャパン)」は、EU・ジャパンフェスト日本委員会のサポートを受けて実施されました。


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