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「ムーミンバレーパークのAto Z」【B】Building(たてもの)

ムーミンバレーパークのちょっとディープな情報を、AからZまでのキーワードにして、アルファベット順にご紹介していく「ムーミンバレーパークのA to Z」。

今回は、【B】。パークの縁の下の力持ち的な存在の「Building(たてもの)」について、
色使いがかわいい!とご意見いただくことも多いので、掘り下げてみたいと思います。

これは改めて書くことでもないかもしれませんが、
ムーミンバレーパーク=ムーミン谷そのもの、ではないんですよね。
だって、ムーミンの物語には、ショップやレストラン、アトラクションや
展示施設のコケムスなんてものは登場しませんから。

パークの公式説明には、このように書かれています。

“豊かな自然に囲まれたムーミンバレーパークは、ムーミン一家が暮らすムーミン屋敷、ムーミンの物語を追体験できる複数のアトラクション、
ムーミン一家とその仲間たちによるライブエンターテインメントやグリーティング、物語の中で登場する水浴び小屋・灯台、
物語の魅力や原作者トーベ・ヤンソンの想いを感じることができる展示施設など、原作の大きな魅力である文学性やアート性にあふれた空間であり、
訪れた皆さんが新しい発見に出会うことができる場所です。
世界最大級の品揃えとなるムーミンのギフトショップでは、
ここでしか買うことのできない多くのオリジナルグッズが並び、
レストランでは、北欧とムーミンの世界観を融合したオリジナルメニューを楽しめます。”

…そうですね、少しややこしいかもしれないですが、
確かにここは、「ムーミンの物語に入り込んだり、追体験できる場所」というのは間違いないんです。

ムーミン屋敷水浴び小屋、天文台のあるおさびし山、灯台海のオーケストラ号などは、実際に物語のなかに挿絵として登場しているものもありますので、その手がかりをもとに、できる限りの再現をしているわけですが、物語のなかに登場しないたてものを、どのようにして違和感なく調和させるか、というのは、チャレンジのひとつでした。

そこで、ムーミンの物語の世界観と、自然豊かな空間の中に、現代的で無機質な建物は合わないのでムーミンの作者トーベの生まれたフィンランドにあるいくつかの旧市街と呼ばれる小さな木造の家々が立ち並ぶ街並みや色使いを参考にすることにしました。

例えば、フィンランドの世界遺産にもなっているラウマ、ヘルシンキから日帰りでも行けるポルヴォー、もうひとつのムーミンのテーマパーク「ムーミンワールド」があるナーンタリの旧市街など。

ナーンタリには、18世紀後半~19世紀にかけて建てられた木造の家並みが残る旧市街の一画がムーミンワールドへ行くまでの通り道に面しているのですが、それはまるでムーミンの世界に入るの前の門前町のようでもあり、
現代の空間から、ムーミンの世界へ入り込むための、つなぎの空間のようにも感じたのです。

ムーミンバレーパークの場合、門前町的な役割を担っているのは、北欧のライフスタイルを体験できるメッツァビレッジになります。

日本の飯能市から、森と湖が広がる北欧を感じる場所へ。

北欧のシンプルでモダンな色使いのたてものが並ぶメッツァビレッジを通り抜けた先のムーミンバレーパークでは、カラフルで古き良き街並みがゲストをお出迎え。
ビレッジとパーク、メッツァ全体を通して、ゲストがちょっとした北欧旅行をした気分になるような空気感、というのを意識しました。

話をムーミンバレーパークに戻しますね。

カラフルな街並みで特にこだわったのが、並び方や色の組み合わせです。

実はそれぞれの建物の色と機能のイメージも合うようにしています。
例えば、エンマの店はエンマの劇場に合わせてシックな色だったり、
ニブリングの店は海のオーケストラ号に合わせて、海を感じる爽やかなスカイブルー、などを考えながらも、屋根の色と壁の組み合わせや、隣り合う小屋が似たような色になっていないか、またはまわりの建物と並んだときにちぐはぐに見えないか、というバランスを見て、何度もシミュレーションを重ねながらパークの街並みは完成しています。

さて、ここでひとつ例外が出てくるのが、展示施設「コケムス」です。

コケムスはミュージアム的な要素もあるので空調の管理や、メインショップやレストランなどたくさんのゲストが入れるようにするために、建物の構造上、大きく頑丈にして、しかも、素材もほかの小屋と同じ木造のような素材では難しいということでした。

そこで、コケムスに関しては、どうしても無機質な建物になってしまうけれど、できるだけ、まわりの自然や横にならぶムーミン屋敷と並んだときに違和感がないように、しかも、緑が多い時期だけではなく、葉が落ちてしまう冬の時期でも、まわりと調和するようなデザインを選びました。

パークのオープン当時は、3月の春がはじまる直前(つまりほぼ冬)で、
建物を覆う植物が育たず、コンクリート面がむきだしになってしまうという
状態でのスタートでしたが、今の時期は、梅雨を迎えぐんぐんと植物が伸びています。
そんなコケムスの壁の植物の状態を通して、パークの季節の変化を感じたり、これから年月を経ての変化を観察していく、というのもパークの楽しみ方の1つかもしれません。

そうそう、メッツァビレッジからムーミンバレーパークに向かうまでに対岸に見えてくる、飛行おにのジップラインアドベンチャーの小屋の色使いとそのまわりの景観も、北欧からのゲストには、田舎にある水辺の古い小屋の風景みたいで、懐かしい!とよく言っていただけるということも、特筆すべきポイントでした!




ムーミンバレーパークのAtoZ に関しては、こちら(↓)をご覧ください

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株式会社ムーミン物語
川崎 亜利沙
(text by Arisa Kawasaki, Moomin Monogatari ltd.)

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